ひこばえ

暮らしの中で

 

季節はもうすっかり秋だというのに 収穫の終わった田んぼが

春先の田植えの頃のように まだ青々としている

稲刈り後の株に 新しく再生した稲のことを「ひこばえ」と言うのだと

先日の日本農業新聞で 改めて知った

この山里にも 9月の中旬以降に稲刈りが終わったというのに

その「ひこばえ」が元気に目を出している

聞けば 今では この「ひこばえ」を利用して 

もう一度 稲を収穫する「再生2期作」という技術が

もう開発されていると言うから それにも びっくりだ

近頃の温暖化の影響がこんなところにも現れているらしい

そういえば以前に読んだ小説の中にも

大好きな作家である重松清の作品で「ひこばえ」という本があったことを思い出した

小学校2年生の時に 別れたきりだった父親が亡くなったという報せを

48年ぶりに受けた主人公が この空白を埋めようとして

父親の人生に向き合おうとするというものだ

父親は 死の直前に「自分史」を書こうと思い立っていたらしい

家族と別れてひとりでひっそりと人生を送っていたはずで

最後まで昔の家族との再会を望んでいたわけでもないのに

なぜか自分史を書こうとしていた

それは 誰に読ませたかったのか 子を思う親 親を思う子 さらに孫まで

自分がいなくなっても何か引き継がれるものがあるのではないか

それが家族でなくても引き継いでくれる人がいるかもしれない

という希望があったのかもしれない

この小説を読み なぜだか深く考えさせられ

一方で穏やかな気持ちにもさせてくれた小説だった

稲株はその代表なのだろうが 「ひこばえ」とは 

樹木の切り株や根元から次々に萌え出てくる元気な若い芽のことだ

ちょっと真面目な話 果たして自分にも子どもたちや孫たちに

何か自信を持って残せるものなんてあるのだろうかなどと

少し考えさせられもした

では、

エンジョイ ひこばえ

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