”日本ミツバチはじめました”
褐色の山々がみるみると生気に満ちあふれ
田んぼの土手が緑の彩りを濃くしていくと
野山には、さまざまな花々が競うように咲き出す
その花々をめがけて この季節を待ってましたとばかりに飛び回るのが
我が家の日本ミツバチ達だ
いつか日本ミツバチを飼いたいなあと思ったのは今から6年ほど前だった
熱しやすい性格からか もしかしたら自分にもできるかもしれないと
すぐに巣箱と数冊の日本ミツバチの本を買い 図書館にも通った
いつかは養蜂をやりたい いつかは幸運が舞い降りるかもなどという
淡い期待のもとに購入したものだったが ついぞその日は来ないまま
あっという間に時が過ぎた しかし 2年後のとある日突然の展開が待ち受けていた
その日は 7月初めの風がほとんどない穏やかな日曜日 昼頃 家の前で
右へ左へと激しく飛び交う大量のミツバチたちの群れに驚いた
しばらくすると庭の松の木に大きな蜂球が出来上がってくるではないか
すでに忘れかけてはいたが 以前に学習した俄か豆知識を頭の中でフル回転させた
上下の雨がっぱにゴム手袋 長靴 頭には最近買ったばかりの
玉ねぎの入っていた大きな赤い網袋をすっぽりと被り 服装を整えた
大量のハチ達に刺されるのではないかという恐怖で心臓をバクバクさせながらも
それでも果敢に大きなレジ袋を蜂球に被せ
そろりそろりとハチ達を袋の中へ誘導していき 巣箱にハチ達を入れていく
入れても入れてもまた巣箱から這い出て 蜂球に戻って行ってしまうのだが
懲りずに何度も何度も同じ作業を繰り返した
日本ミツバチ達の社会が一匹の女王蜂を中心とする
女系社会などという俄か知識など その時は全く頭から飛んでおり
ましてや集団の中にたった一匹の女王蜂を見つけることなど
できるはずもなかった 勇気を振り絞って
何度も何度も捕獲活動を繰り返したことで 精も根もつき果てて
疲れ切って蜂球から少し離れたところでぐったりと座り込んでいると
松の木の蜂球が段々と小さくなり 次第に巣箱の入り口付近に
蜂球ができはじめるではないか
全身汗だくだが 見たこともない光景に見とれ
しばらくしてようやく女王蜂と蜂群の捕獲ができたことに気づく
やがてその蜂球もなくなり 平静を取り戻すかのように
働き蜂たちが巣箱の中を行き来する状態が作り出されたのである
これが わたしのまさに “日本ミツバチはじめました” の最初のエピソードだ
玉ねぎの入っていた赤い網袋を蜂除けに被るアイデアなどは
我ながらグッドジョブであったし 捕獲も見事だったと自画自賛だが
一方で この一部始終を遠巻きに見ながら携帯で撮影していた妻に言わせると
赤い網袋をすっぽり被ったユーモラスないで立ち 恐怖心から蜂球に向かっては引き返し
向かっては引き返す意気地のなさ 蜂球に手をかけては引っ込め
手をかけては引っ込める頼りない仕草に 笑いが止まらなかった とか
その後妻は 家族や友人・知人をはじめ 良く知らない人までに
事あるごとにこの画像を見せては 大いに笑いを提供したらしい
この時捕まえた可愛い日本ミツバチ達は 残念ながら私の経験のなさから
色づく秋を前に 山の彼方へ逃去してしまう結果となってしまったのだが
このやや情けない経験があるからこそ その後にもまた逃去しても
自分の元にやってきてくれる日本ミツバチ達は可愛いし
子供のように愛おしい存在になっている
では、
エンジョイ!みつばち
#日本ミツバチ#ハチミツ#趣味
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